私たちの家族が今の分譲マンションに越してきて三年目の春、平穏な日常を脅かす小さな影が現れました。ベランダのエアコン室外機の裏に、数本の木の枝が落ちているのを見つけたのが全ての始まりでした。当時は仕事の忙しさにかまけて「後で掃除すればいいや」と軽く考えて放置してしまったのですが、これが大きな間違いでした。わずか二日後、その枝の山は立派な土台の形を成し、そこには一羽の鳩が誇らしげに鎮座していたのです。それが「作りかけの巣」であり、鳩がわが家をターゲットに定めた確固たる証拠であると気づいたのは、ネットで鳩の被害について調べた後のことでした。放置すれば卵を産まれ、法律で撤去できなくなる。そのタイムリミットを知ったとき、私は背筋が凍る思いがしました。翌朝、鳩が餌を探しに飛び立った隙を狙い、私は完全装備でベランダに出ました。マスクを二重にし、厚手のゴム手袋をはめ、用意した次亜塩素酸スプレーをその「作りかけの城」にたっぷりとかけました。枝を一つ一つ袋に入れ、最後に床を磨き上げ、これでもう大丈夫だろうと胸を撫で下ろしました。しかし、鳩の執念は私の想像を絶するものでした。その日の午後には、再び鳩が戻ってきて、何もない床の上で困惑したように鳴き声を上げ、数時間後にはどこからか新しい枝を運んできたのです。そこから一週間に及ぶ、鳩と私のベランダを賭けた戦いが始まりました。枝を置かれては捨て、匂いを消しては忌避剤を塗り、時には鳩が止まろうとする瞬間にカーテンを勢いよく開けて驚かせる。子供たちも協力してくれ、ベランダ側で大きな声で遊んだりして、人の気配を絶やさないようにしました。精神的にも肉体的にも疲弊しましたが、この「作りかけ」の段階で妥協したら、この先何年も糞害とダニに悩まされることになる。その一心で、枝一本、羽一枚すら残さない徹底した管理を続けました。十日ほど経った頃、ようやく鳩は私のベランダをあきらめ、向かいのビルの屋上へと去っていきました。あの時、作りかけの巣を放置し続けていたら、今頃どうなっていたか。想像するだけで恐ろしくなります。鳩の被害は、最初の数本の枝から始まります。その小さな予兆を「ただのゴミ」と笑い飛ばさず、全力で対処したことが、結果としてわが家の清潔と平和を守り抜くことにつながったのです。今でも春になると鳩の鳴き声に敏感になりますが、あの経験があるからこそ、二度と彼らに隙を見せることはありません。家を守るということは、こうした小さな脅威を見逃さないことの積み重ねなのだと、深く実感しています。
鳩の巣の作りかけを放置せずに家を守り抜いた体験記