クローゼットの小さな穴、犯人は誰?衣類を食べる虫の正体
大切にしまっておいたはずのセーターに、いつの間にか開いている小さな穴。それは、クローゼットの中に潜む、見えない敵の仕業かもしれません。衣類を食べる虫、いわゆる「衣類害虫」は、私たちの知らない間に、大切な衣類を台無しにしてしまう厄介な存在です。その正体を正しく知ることが、効果的な対策への第一歩となります。家の中で衣類に被害をもたらす代表的な虫は、主に二つのグループに分けられます。一つは「イガ」や「コイガ」といった、ガの仲間です。成虫は一センチ程度の小さなガで、光を嫌い、クローゼットやタンスの暗い場所に潜んでいます。しかし、実際に衣類を食べるのは、成虫ではなく、その「幼虫」です。卵から孵ったイモムシ状の幼虫が、ウールやカシミヤといった動物性繊維を食べて成長し、衣類に穴を開けてしまうのです。もう一つのグループが、「ヒメカツオブシムシ」や「ヒメマルカツオブシムシ」といった、カツオブシムシの仲間です。こちらの成虫は、テントウムシに似た二、三ミリほどの小さな甲虫で、意外にも、屋外で花の蜜を吸っていることもあります。彼らが家の中に侵入し、暗くてホコリっぽい場所に卵を産み付けます。そして、孵化した毛深い幼虫が、衣類だけでなく、鰹節や煮干しといった乾物、動物のフケ、ホコリまで、非常に幅広いものを食べて成長します。ここで重要なのは、どちらのグループも、衣類を食べるのは「幼虫」の時期だけであるという点です。つまり、クローゼットの中で小さな成虫を一匹見つけたということは、見えない場所で、たくさんの幼虫があなたの服を食べている可能性がある、という危険信号なのです。この見えない敵の存在を認識し、彼らが活動を始める前に、あるいは活動を始めた初期の段階で対策を講じることが、悲劇を防ぐための鍵となります。