ベランダの隅やエアコンの室外機の裏側に、数本の小枝や乾いた草が散らかっているのを見つけたとき、多くの人は単なるゴミの飛来だと思い込んで見過ごしてしまいます。しかし、それが数日のうちに形をなし始めているのであれば、それは鳩が新しい生活拠点を築こうとしている作りかけの巣である可能性が極めて高いといえます。この初期段階でどのような行動をとるかが、その後の住環境の衛生状態を大きく左右することになります。鳩は非常に執着心が強く、一度安全で子育てに適した場所だと認識した場所には何度でも戻ってくる習性があります。小枝が数本置かれただけの状態は、鳩にとっての占有宣言であり、そこが安全かどうかを確認するためのテスト期間でもあります。もしその状態を放置してしまえば、鳩はここは邪魔されない安全な場所だと確信し、驚くべき速さで本格的な巣を完成させてしまいます。作りかけの段階で撤去しなければならない最大の理由は、日本の鳥獣保護管理法という法律にあります。この法律では、野生の鳥類である鳩そのものや、卵がある巣、雛がいる巣を許可なく処分することが厳しく禁じられています。つまり、巣が完成し、卵が一つでも産み落とされた瞬間、たとえ自分の家のベランダであっても、専門の許可を得るか雛が巣立つまで手出しができなくなるのです。その期間は数ヶ月に及ぶこともあり、その間に大量の糞による汚染や、ダニやノミの発生、鳴き声による騒音被害に耐え続けなければなりません。作りかけの状態、つまり卵や雛がまだ存在しない段階であれば、法律に抵触することなく自力で撤去することが可能です。このゴールデンタイムを逃してはいけません。撤去作業を行う際は、衛生面への徹底的な配慮が必要です。鳩の糞や巣の材料となる小枝には、クリプトコックス症やオウム病といった重篤な感染症の原因となる病原菌が潜んでいることがあります。作業時には必ずマスクと使い捨てのビニール手袋を着用し、病原菌を含んだ粉塵を吸い込まないように注意してください。まず、作りかけの巣に水をかけ、小枝や糞が舞い上がらないように湿らせます。その後、新聞紙や古布で小枝を包み込むようにして回収し、速やかに密閉可能なゴミ袋へ入れて処分します。巣があった場所には鳩の執着心を断ち切るための匂いが残っているため、アルコール除菌剤や薄めた塩素系漂白剤を使って、周辺を念入りに洗浄することが再発防止の鍵となります。一度巣を作ろうとした場所は、鳩にとってお気に入りのスポットになっているため、一度の撤去で安心せず、数日間は頻繁にベランダに出て人の気配を見せたり、忌避剤を設置したりして、鳩にここは危険な場所だと認識させ続けることが重要です。初期段階の小さな違和感を逃さず、迅速に対応することこそが、大切な家を鳩の被害から守る唯一の防衛策となります。
鳩の巣を初期段階で撤去するための法的根拠と衛生対策