スズメバチ対策というと、多くの人が彼らが嫌う匂いのことばかりを考えがちです。しかし、それと同じくらい、いや、それ以上に重要なのが、私たちが知らず知らずのうちに発してしまっている、スズメバチを「誘引する香り」を生活空間から排除することです。あなたが良かれと思って使っているその香りが、実はスズメバチに対して「ここにごちそうがありますよ」という招待状を送っているとしたら、これほど恐ろしいことはありません。スズメバチを強力に引き寄せる香りの筆頭は、なんと言っても「甘い香り」です。彼らの成虫は、花の蜜や樹液、熟した果物などを主食としています。そのため、香水や香りの強い柔軟剤、ヘアスプレー、そして甘いジュースやアルコール飲料の匂いには、非常に敏感に反応します。特に、夏場の庭でのバーベキューや、ベランダでの夕涼みの際には、飲み残しの缶やペットボトルを放置しないよう、最大限の注意が必要です。次に警戒すべきなのが、「黒い色」に関連するものです。これは匂いではありませんが、彼らの警戒心を煽り、攻撃行動を引き起こす重要な要因です。スズメバチの天敵であるクマなどを連想させるため、黒くて動くものに対しては、非常に攻撃的になると言われています。夏場に黒い色の服を着て庭仕事をするのは、自ら的になっているようなものです。また、意外な盲点となるのが、人間の汗の匂いです。汗に含まれる成分の一部が、彼らの警報フェロモン(仲間を呼び寄せる匂い)の成分と似ているという説もあり、汗だくのまま巣の近くを通りかかるのは非常に危険な行為です。これらのスズメバチを誘引する要因を日常生活から意識的に排除すること。それは、彼らが嫌う匂いを撒くことと同じくらい、いや、それ以上に効果的で基本的な自己防衛策なのです。