ゴキブリの死骸の処理方法として、多くの人が真っ先に思いつき、そして実行してしまいがちなのが、「トイレに流す」という行為です。目の前の不快な物体を、一瞬で視界から消し去り、水と共にどこか遠くへ葬り去ることができる。これは、精神的な負担を最小限に抑える上で、非常に魅力的な選択肢に思えるかもしれません。しかし、専門家の視点から見ると、この行為はいくつかの深刻なリスクをはらんでおり、基本的には推奨されない「NG行動」とされています。その最大の理由は、ゴキブリの持つ、驚異的な生命力にあります。殺虫剤で完全に絶命したように見えても、実は一時的に麻痺しているだけの「仮死状態」である可能性があります。そんなゴキブリをトイレに流した場合、下水管の中で意識を取り戻し、配管を伝って、再びあなたの家や、あるいは集合住宅の他の部屋に舞い戻ってくる、というホラー映画のような事態も、理論上はゼロではないのです。また、ゴキビの体は、油分を多く含んでおり、水に浮きやすい性質を持っています。そのため、一度流しただけでは完全に流れきらず、便器の中に浮かんでくる、という最悪の再会を果たしてしまう可能性もあります。さらに、衛生的な観点とは別に、物理的な問題も存在します。ゴキブリの死骸だけでなく、それを掴んだ大量のティッシュペーパーなどを一緒に流してしまうと、それが原因でトイレの配管が詰まってしまうリスクです。特に、節水型のトイレは水量が少ないため、詰まりの危険性はより高まります。ゴキブリ一匹のために、高額な修理費用がかかるような事態は、誰もが避けたいはずです。これらのリスクを総合的に考慮すると、やはり最も安全で確実な方法は、ビニール袋で固く密閉し、可燃ゴミとして捨てることです。一瞬の安易な判断が、後々のより大きなトラブルを招くことのないよう、冷静で賢明な選択を心がけましょう。
ゴキブリの死骸、トイレに流すのは本当にNG?