「ハチの駆除は夜に行くのが基本ですが、それが一番緊張する瞬間でもあるんですよ」と、ベテランの害虫駆除業者は語り始めました。世間一般では、アシナガバチの活動時間は昼間であり、夜は眠っているから安全だと思われがちですが、現場のプロから見れば、夜のアシナガバチには夜なりの恐ろしさがあるといいます。夜間、ハチたちは確かに空を飛んで攻撃してくることはありません。しかし、巣に密集している個体数は昼間よりも圧倒的に多く、一箇所に全戦力が集中している状態です。駆除のためにライトを向けた瞬間、巣の表面がザワザワと波打ち、一斉にハチたちが身構える気配は、何度経験しても鳥肌が立つものだそうです。業者が語る夜間作業の最大の注意点は、アシナガバチが「光」に対して見せる独特の反応です。彼らは暗闇で方向を識別できませんが、強い光が照射されると、それを太陽光や出口と勘違いして、光の源に向かって猛然と歩いてくることがあります。飛べないからといって油断していると、地面に落ちたハチが足元からズボンを這い上がってきたり、防護服の隙間を狙ってきたりするため、足元の警戒は昼間以上に重要になります。また、夜間はハチの活動時間が終了しているため、ハチ自身の警戒心も「休息モード」に入っていると思われがちですが、実際には「守備特化モード」に入っていると考えるべきだといいます。日中のように分散していない分、巣への刺激に対する反応の密度が濃いのです。業者が夜間を選ぶ真の理由は、単にハチが飛べないからだけでなく、外に出ているハチを一網打尽にすることで、翌朝に残された「迷いバチ」が家主を襲う二次被害を防ぐためです。しかし、素人が中途半端な装備で夜間に手を出すと、暗闇の中でハチを地面に撒き散らす結果になり、パニックに陥って転倒したり、複数のハチに刺されたりする事故が後を絶ちません。駆除業者は、作業前に周囲の障害物を完璧に把握し、万が一の退路を確保してから、活動時間が止まっているはずのハチたちに対峙します。彼らの活動時間が終わるのを待ってから動くという戦略は、理にかなっていますが、それはあくまで「ハチの夜の習性」を熟知しているからこそ成り立つ高度な戦術なのです。ハチの時計が止まっているように見える夜こそ、一瞬の油断が命取りになる。プロの言葉からは、自然の生き物に対する深い畏怖の念と、活動時間の隙を突く作業の厳しさが伝わってきました。
駆除業者が語る夜間のアシナガバチの反応と作業の注意点