それは、日曜日の朝のことでした。子供たちにせがまれて、久しぶりにホットケーキを焼こうと、私はキッチン戸棚の奥から、封の開いたホットケーキミックスの袋を取り出しました。ボウルに粉を入れようと袋を傾けた瞬間、サラサラと落ちる白い粉の中に、いくつもの黒いゴマのような粒が混じっていることに気づきました。最初は、何か特別な材料でも入っているのかと、不思議に思いませんでした。しかし、そのうちの一粒が、ゆっくりと動いたのです。全身に鳥肌が立ちました。それはゴマではありませんでした。体長3ミリほどの、赤茶色をした、紛れもない虫でした。慌てて袋の中をよく見ると、おびただしい数の同じ虫が、粉の中でうごめいていました。シバンムシです。私は声にならない悲鳴を上げ、その袋をシンクに投げ捨てました。その日から、我が家のキッチンは、徹底的な調査と大掃除の現場と化しました。戸棚の中の食品を全て出し、一つひとつ点検していくと、同じようにシバンムシの被害にあっているものが次々と見つかりました。封の開いたパスタ、買い置きしていた乾麺、そして犬のドッグフードまで。それらは全て、購入した時の袋のまま、輪ゴムで口を縛っただけで保管していたものでした。原因は、私のずさんな食品管理にあったのです。私は、被害にあった食品を全て泣く泣く廃棄し、戸棚の隅々を掃除機で吸い、アルコールで拭き上げました。そして、その足でホームセンターへ走り、様々なサイズの密閉容器を大量に購入しました。この一件以来、我が家では、どんな乾燥食品も、買ってきたらすぐに密閉容器に移し替えるのが鉄則となりました。あの日の朝、ホットケーキミックスの中から現れた無数のゴマ粒たちは、私に食の安全と、正しい保存方法の重要性を教えてくれた、忘れられない、苦い教訓の象ენなのです。
ホットケーキミックスからゴマみたいな虫が!私の体験談