まさか自分の家が、と誰もが思うのではないでしょうか。私もそうでした。あの日の夕方、リビングの窓際にびっしりと群がる小さな羽虫を見つけるまでは。最初は季節柄のただの虫だろうと軽く考えていました。しかし、その数は異常で、よく見るとアリによく似た姿をしています。胸騒ぎがしてスマートフォンで「家に大量の羽アリ」と検索した時、画面に表示された「白蟻」の文字に血の気が引くのを感じました。すぐにいくつかの専門駆除業者に連絡を取り、翌日には調査に来てもらうことになりました。約束の時間、作業着姿の調査員の方が到着し、家の間取りや築年数などを丁寧にヒアリングした後、床下収納の蓋を開けて暗い空間へと潜っていきました。リビングで待つ間の時間は永遠のように長く感じられ、様々な悪い想像が頭を駆け巡ります。ゴソゴソという物音だけが聞こえ、不安は募るばかりでした。しばらくして床下から出てきた調査員の神妙な面持ちは今でも忘れられません。彼が持っていたデジタルカメラの画面には、信じがたい光景が映し出されていました。床下には無数の蟻道と呼ばれる白蟻の通り道が、まるで血管のように張り巡らされ、家の土台となる木材の一部は、指で軽く押すだけでボロボロと崩れ落ちるほどに食い荒らされていたのです。映像を見せられながら、これはイエシロアリによる被害で、かなり進行していると告げられた時、私は言葉を失いました。見積もり金額もさることながら、これまで安全だと思っていた我が家が、実は静かに崩壊の危機に瀕していたという事実に、ただただ愕然とするばかりでした。あの時、羽アリの発生を軽視していたらどうなっていたか。そう考えると今でも背筋が凍る思いです。この経験を通じて、住宅のメンテナンスと早期発見の重要性を、身をもって痛感させられました。
我が家が白蟻の巣窟になった日の記憶