私の経験からお話ししますと、ゴキブリホイホイを使い始めた初期に感じるあの恐怖は、ある種の錯覚に近いものがあります。ある夏、古いアパートに引っ越した私は、予防のつもりでキッチンの隅々に捕獲器を配置しました。すると、翌朝には既に三匹が捕まっており、その翌週にはさらに数が増えていました。その時、私は激しい後悔に襲われました。捕獲器の匂いが近所のゴキブリにパーティーの招待状を送っているのではないか、置かなければこれほど見ることはなかったのではないかと本気で疑ったのです。しかし、害虫駆除の専門家に相談したところ、それは大きな間違いであることを諭されました。専門家によれば、捕獲器は家の中に既に潜んでいるゴキブリの密度を測るためのセンサーのような役割を果たしているに過ぎません。それまで冷蔵庫の裏や壁の隙間でじっとしていた彼らが、美味しそうな匂いに釣られて出てきた結果、私の目に触れるようになっただけなのです。つまり、増えたのではなく、そこにいたことが判明したというわけです。この事実は、心理的に非常に大きな影響を与えます。捕獲器に一匹でも入っているのを見ると、私たちの脳はその部屋全体に無数の個体が潜んでいるというイメージを膨らませてしまいます。これをカクテルパーティー効果に似た選択的注意と呼ぶことができます。一度ゴキブリを意識してしまうと、それまでは気にならなかった床の小さなゴミや、風で揺れたカーテンの影さえもがゴキブリに見えてくるのです。この不安が、逆に増えたという確信に変わってしまうのですが、実際には捕獲器が確実にその数を減らしていることに他なりません。もし捕獲器に大量に入っているのなら、それは設置が正解だったことを意味します。むしろ、放置していればそれらの個体が自由に繁殖を繰り返していたはずですから。私の失敗は、捕獲器の成果を見てパニックになり、対策を中断しようとしたことでした。現在は、捕獲器はあくまで現状把握のための道具と割り切り、毒餌剤と併用することで、あぶり出された個体を一網打尽にする戦略をとっています。道具の性質を正しく理解することで、余計な恐怖に振り回されることなく、冷静に住環境を改善していくことができるようになりました。